リンパ管疾患情報ステーション

この用語集ではリンパ管疾患に関連する医学・医療用語を易しい言葉で説明することを目的としています。

(記載されている内容は急速に進歩する医学の中で古い情報となってしまう可能性があります。可及的にアップデートを繰り返していきますが、お気づきの点はご指摘頂きますようお願いいたします。

索引

英数字


英数字

  • CT

    Computed tomography(コンピュータ断層撮影)の略称です。体をぐるっと一周しながらX線を当てて、得られた画像をコンピュータで断面写真に合成します。体のいろいろな方向からみた断面図を見ることが出来ます。非常に小さな病変を見つけたり、病変の広がりを確認したりするのに便利です。また造影剤を用いると血管をはっきり映し出したり、血管を多く含む組織をはっきりさせたりすることが出来ます。

    (2017年9月1日)
  • Lymphantic Malformation(リンパ管奇形)

    血管腫・脈管奇形の国際学会であるISSVA(International Society for the Study of VascularAnomalies)は、先天的なリンパ管異常により発生する疾患全体をLM(lymphatic malformation)と分類しています。その中で最も頻度の高いリンパ管腫のみを指してLMと呼ぶこともあります。研究の結果、リンパ管腫は腫瘍でないことがわかっており、近年、日本でもリンパ管奇形と呼ばれるようになってきています。

    (2017年9月1日)
  • macrocystic LM(マクロシスティックリンパ管奇形)

    近年国際基準となりつつある血管腫・脈管奇形の国際学会であるISSVA(International Society for the Study of VascularAnomalies)が提唱するISSVA分類では、嚢胞が認められるリンパ管腫(リンパ管奇形)を3つにわけており、嚢胞のサイズが大きいものがこのタイプにあたります。

    (2017年9月1日)
  • microcystic LM(ミクロシスティックリンパ管奇形)

    近年国際基準となりつつある血管腫・脈管奇形の国際学会であるISSVA(International Society for the Study of VascularAnomalies)が提唱するISSVA分類では、嚢胞が認められるリンパ管腫(リンパ管奇形)を3つにわけており、嚢胞のサイズが小さいものがこのタイプにあたります。

    (2017年9月1日)
  • mixed LM(混合型リンパ管奇形)

    近年国際基準となりつつある血管腫・脈管奇形の国際学会であるISSVA(International Society for the Study of VascularAnomalies)が提唱するISSVA分類では、嚢胞が認められるリンパ管腫(リンパ管奇形)を3つにわけており、嚢胞のサイズが大小混在しているものがこのタイプにあたります。

    (2017年9月1日)
  • MRI

    Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像検査)の略称です。磁場と電波を用いて病気の部分の画像を撮影する検査です。放射線被曝の心配がなく、CT検査よりも組織別に細かく色分けが出来るので、病変がどのようなものなのか(良性か悪性かなど)を診断する際に役立ちます。撮影の時は、大きな音がして撮影には30分程度時間がかかるので小さなお子さんでは鎮静が必要です。

    (2017年9月1日)
  • OK-432

    薬剤名。商品名はピシバニールです。不活化した溶連菌を凍結乾燥させた製剤で強い炎症を引き起こす作用、免疫反応を誘導する作用があります。感染性はありません。抗癌剤のひとつとして使われることもあります。日本ではリンパ管腫の硬化治療に用いる第1選択薬です。

    (2017年9月1日)

  • インターフェロン

    体の中の細胞の働きを調整するサイトカインというタンパク質の1種で、ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをします。リンパ管腫の治療においても使われることがありましたが、効果は一定でなく、現在ではリンパ管腫にはほとんど用いられません。

    (2017年9月1日)
  • エコー

    超音波検査のこと。
    (2017年9月1日)

  • 海綿状(かいめんじょう)リンパ管腫

    リンパ管腫は3つに分類されますが、その内の1つで薬剤を嚢胞内に注入することが難しいほど小さい嚢胞が集まったタイプです。病変部分は、嚢胞以外の周りの組織の割合が多いことが特徴です。良く水を含むスポンジに例えられます。一般的には硬化療法が効きにくいタイプです。

    (2017年9月1日)
  • 化学療法(かがくりょうほう)

    抗がん剤による薬物療法のこと。通常は悪性腫瘍に用いられますが、難治な血管腫、リンパ管腫、リンパ管腫症などにも使用された報告があります。

    (2017年9月1日)
  • カポジ型リンパ管腫症

    従来、リンパ管腫症とされてきた症例の中に、病理組織検査をすると、 紡錘形 (ぼうすいけい)のリンパ管内皮細胞が集まる病変をもつ症例が確認されています。血小板減少、貧血、凝固異常、胸水や肺浸潤などの症状が見られ、色々な臓器に病変が現れる多発性の疾患です。小児期に多く発生します。これらをカポジ型とする新しい概念が出てきていますが、未だ不明な点が多く、ISSVAでは分類不能とされています。

    (2017年9月1日)
  • 血液凝固異常(ぎょうこいじょう)

    血液は血管内を巡っている限りは固まることはありませんが、血管の外に出るとタンパク質の働きにより通常は凝固します(かたまります)。この凝固能力が低下したり、 亢進 (こうしん)したりします。

    (2017年9月1日)
  • 胸水(きょうすい)

    肺と胸壁のあいだの空間である胸腔(きょうくう)に体液がたまってしまうこと、もしくはその体液のことを呼びます。特に脂肪や脂肪酸が乳化しリンパに混じった乳白色の体液がリンパ管から漏れて胸水が溜まる場合を乳糜胸(にゅうびきょう)と言います。乳糜は胸水の中の1つです。

    (2017年9月1日)
  • 高カロリー輸液(ゆえき)、完全静脈栄養(かんぜんじょうみゃくえいよう)

    高濃度の糖質や必要なアミノ酸、ビタミン、微量元素などを調合した点滴をすること。通常の手や足からの点滴では高濃度の糖分を入れると血管炎を起こすので、太い静脈(中心静脈と言います)から点滴します。乳糜胸(にゅうびきょう)の患者さんや長期に経口摂取できない患者さんが使用します。

    (2017年9月1日)
  • 高分解能CTスキャン

    特に肺や縦隔の病変に有効で、以下の所見を得られることがあります。
    ・縦隔や肺門(両肺の内側の気管支、肺動脈、肺静脈などが出入りする場所)の軟部組織に広範囲にたまったリンパ液
    ・はれて大きくなった 肺小葉間中隔 (はいしょうようかんちゅうかく)
    ・すりガラス陰影(病変がすりガラスのような薄い陰影で映ります)
    ・胸水

    (2017年9月1日)
  • ゴーハム病

    骨が進行性溶解する非常に稀な疾患です。全身のあらゆる骨に単発性あるいは多発性に起こり、進行すると骨痛や病的骨折を起こします。乳糜胸(にゅうびきょう)を合併することもあります。

    (2017年9月1日)
  • 混合型リンパ管腫

    リンパ管腫は3つに分類されますが、その内の1つで、大きな嚢胞と小さな嚢胞が混合しているタイプです。一般的には硬化療法が効きにくいタイプです。

    (2017年9月1日)

  • サリドマイド

    血管新生(けっかんしんせい)を阻害する作用がある薬剤です。1950年代に睡眠薬として使用されていましたが、重大な副作用として催奇形性があることがわかり、販売中止となった過去があります。1965年にハンセン病という難病の皮膚症状に有効性があることがわかり、その後、様々な研究からいろいろな難病に有効であるとされています。現在は、多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)やがんなどに使用されています。またリンパ管腫症に有効性があったという報告があります。残念ながら、国内では保険適応がありません。

    (2017年9月1日)
  • 縦隔(じゅうかく)

    気管、食道、胸腺、心臓、大動脈、大静脈、多数の神経などが含まれている、左右の肺に挟まれた胸の中心部分です。拡張した異常なリンパ管組織が広がることがあります。

    (2017年9月1日)
  • 出生前診断(しゅっせいぜんしんだん)

    妊娠時の超音波検査などで胎児のうちにリンパ管腫が発見されることがあります。出生後と同じような画像検査結果となりますが、リンパ管腫の確定診断は生まれてからなされます。胎児診断とも呼ばれます。

    (2017年9月1日)
  • 心嚢水(しんのうすい)

    心臓のまわりをとりかこむ袋である心嚢と心臓の間にリンパ液がたまってしまうこと。

    (2017年9月1日)
  • 造影剤(ぞうえいざい)

    レントゲン検査やCT、MRI検査などの画像診断検査をより分かりやすくするために用いる薬剤です。点滴で投与すると血管を強く映したり、病変部に集まったりして分かりやすくなります。ただし、副作用(アレルギー反応や腎障害)が出る場合や患者さんによっては使用できない場合があるので注意が必要です。

    (2017年9月1日)

  • 胎児診断(たいじしんだん)

    出生前診断と同義語。出生前診断参照。

    (2017年9月1日)
  • 中鎖トリグリセリド

    一般的な油に含まれる脂肪酸(炭素数が18程度の長鎖脂肪酸)よりも分子鎖が短く、その構造の違いにより、リンパ管を通らずに肝臓に吸収され、速やかにエネルギー源として代謝されるため、体脂肪として蓄積されにくいという特徴があります。そのため、乳糜胸(にゅうびきょう)の患者さんに栄養療法として使用されることがあります。ココナツオイル、パーム核油、牛乳、母乳などに含まれますが、効率の良いオイルは医薬品やサプリメントとして販売されています。

    (2017年9月1日)
  • 超音波(ちょうおんぱ)検査/エコー検査/US(ultrasonography)

    超音波検査は、超音波を対象物に当ててその反響を映像化することで、対象物の内部の状態を非破壊的に調査することのできる画像検査法の一種です。エコー検査は体外からプローブを当てるだけで検査できる上、非常に安全でこれといった副作用もないことから、医療現場で最も頻繁に行われる検査の1つです。

    (2017年9月1日)

  • 乳糜(にゅうび)

    脂肪分を多く含み乳白色をしているリンパ液を主体とする液体です。腸から吸収された脂肪分やグリセリンが腸のリンパ管に入ってくるために、腸管から集まってきたリンパ液は乳白色になり、乳糜と呼ばれます。

    (2017年9月1日)
  • 乳糜胸(にゅうびきょう)

    乳糜(にゅうび)と言われる、脂肪やグリセリンが混ざった乳白色のリンパ液がリンパ管から漏れて、胸腔内にたまること。

    (2017年9月1日)
  • 嚢胞(のうほう)

    中に液体を含んだ袋状の組織で、主に球形をしています。シストと呼ばれることもあります。

    (2017年9月1日)
  • 嚢胞状(のうほうじょう)リンパ管腫

    リンパ管腫は3つに分類されますが、その内の1つで比較的大きな嚢胞が集まったタイプです。体積の殆どがリンパ液で占められていることが特徴で、嚢胞内に薬剤を注入することが可能で、硬化療法が有効なことが多いです。嚢胞の直径に数字による明確な定義はありません。

    (2017年9月1日)

  • 肺線維症(はいせんいしょう)

    肺が硬く膨らみにくくなり、元に戻らない病態です。ひどくなると呼吸を自由に出来ず息が苦しくなります。リンパ管腫の治療で使われることのあるブレオマイシンの副作用として有名ですが、他にも肺線維症を来す疾患はいろいろあります。

    (2017年9月1日)
  • ピシバニール

    Picibanil。OK-432の商品名です。中外製薬。OK-432の項目参照。

    (2017年9月1日)
  • 脾臓(ひぞう)病変

    脾臓は左側横隔膜(おうかくまく)の下部分にあり、血液に関わる重要な働きをする臓器ですが、そこに拡張したリンパ管組織が出現し広がることがあります。

    (2017年9月1日)
  • 病理検査

    手術や検査などで切除した組織、細胞に特殊な加工をして、顕微鏡で観察すること。専門の病理診断医が病理診断をします。

    (2017年9月1日)
  • 腹水(ふくすい)

    横隔膜より下部の腹壁で囲まれた体内空間である腹腔(ふくくう)にある体液のこと。おなかの水。腸などの腹部の臓器をお互いに滑りやすくしている体液で、循環していますが、バランスが崩れると溜まってしまいます。リンパ液が漏れてくると腹水は乳糜様(にゅうびよう)となります。

    (2017年9月1日)
  • ブレオマイシン

    抗癌剤としても用いられる薬剤です。世界各国でリンパ管腫の硬化療法にも用いられていますが、日本では国に承認された治療法ではありません。副作用として肺線維症が知られており、使用量に制限があります。OK-432と同じく、海綿状より嚢胞性リンパ管腫により効果的とされています。

    (2017年9月1日)
  • プロプラノロール

    β(べーた)受容体拮抗薬(交感神経の1つで、心臓の収縮回数や血液量を増加させる働きをするβ受容体の働きを遮断する薬)のひとつで、高血圧や不整脈などの心臓病に古くから使用されている薬剤です。2008年にフランスでいちご状血管腫(乳児血管腫)に有効であることを偶然発見し、効果は世界中で確認されました。リンパ管腫症やリンパ管腫に有効であったという報告もあります。

    (2017年9月1日)

  • 無水エタノール

    エタノールはビールやワインなどのお酒のアルコール分です。高濃度のエタノールは強い脱水性を発揮し細胞毒になります。70%エタノールは細菌の消毒に用いられています。そのエタノール分が100%に近くなっているものが無水エタノールです。肝臓癌の中に注入する治療が正式に認められています。保険診療外になりますが、リンパ管腫の嚢胞内に投与したりして、一定時間後に排出させる治療に用いられています。

    (2017年9月1日)

  • ラパマイシン

    免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)のひとつで、シロリムスとも呼ばれます。様々な病気に使用しています。免疫抑制作用のほか、がん抑制作用や平滑筋抑制剤用などがあります。リンパ脈管筋腫症やリンパ管腫症に対する有効例が報告されています。

    (2017年9月1日)
  • リンパ液

    毛細血管から漏れ出て体内の組織を浸している間質液(かんしつえき)と呼ばれる液体が、リンパ管に集められたものをリンパ液と呼びます。血液中のタンパク質などの成分や、組織内の細胞より出てくる様々な成分、老廃物を含み、主な細胞成分はリンパ球です。リンパ管を通じて集められ、最後に血管内に注ぎ込みます。

    (2017年9月1日)
  • リンパ管

    血液を全身に行き渡らせる血管と同じように、リンパ管は全身に網の目状に広がっており、各末梢組織で生じたリンパ液を集めて血管に戻すリンパ循環を形成しています。リンパ管腫を含むリンパ管疾患はリンパ管の異常により発生すると考えられています。

    (2017年9月1日)
  • リンパ管腫(かんしゅ)

    リンパ管が袋状に膨らんで中にリンパ液がたまる疾患です。リンパ管疾患の中では、最も多くみられます。

    (2017年9月1日)
  • リンパ管腫症(かんしゅしょう)

    異常な構造となったリンパ管組織が全身の様々な臓器で増える疾患です。小児、若年者に多く発症し、特に縦隔、肺に病変が認められると、乳糜胸(にゅうびきょう)による呼吸困難や窒息を起こすことがあります。また、よく似たゴーハム病では、骨に病変が現れることが多く、疼痛や骨折も起こします。

    (2017年9月1日)
  • リンパ管シンチグラフィ

    自発的に放射線を放つ薬剤をリンパ管に入りやすいアルブミンに付加して体内に投与します。するとリンパ管に取り込まれるため通り道(リンパの流れ)を確認することが出来ます。リンパの動きと病変の関係を調べたり、リンパ管からのリンパの漏れの位置を正確に把握したりするための検査です。

    (2017年9月1日)
  • リンパ管造影

    リンパ液はレントゲン(X線)では見ることができないため、レントゲン不透過の造影剤をリンパ管に注入して、レントゲンにうつるようにして、その流れを確認します。別の方法としてICG(インドシアニングリーン)を皮内に注入する方法があります。ICGはリンパ管に集まって中を流れていきます。ICGは近赤外線を当てると蛍光を発するので特殊なモニタでみると流れが分かります。

    (2017年9月1日)
  • リンパ腫

    (悪性)リンパ腫は免疫を司るリンパ球に由来する悪性腫瘍です。血液やリンパ液にのって、特にリンパ節を中心に全身に進展、浸潤します。化学療法(抗癌剤)と場合により外科的切除の組み合わせで治療します。

    (2017年9月1日)
  • リンパ浮腫(ふしゅ)

    リンパ液が皮膚や皮下組織に溜まって、むくむこと。

    (2017年9月1日)
  • リンパ脈管筋腫症(みゃっかんきんしゅしょう)

    肺や縦隔のリンパ節で平滑筋様の異常細胞が増殖する病気で、30歳前後の妊娠可能な年齢の女性に発症します。遺伝子の異常との関連が知られています。

    (2017年9月1日)
  • リンパ漏(ろう)

    リンパ管が何らかの理由で正常な状態を保てなくなり、リンパ液がリンパ管の外に漏れ出ることです。リンパ管腫では術後に切除断端からリンパ液が漏れてくることがあり、これもリンパ漏と呼ぶことが多いです。腹腔内(お腹の中で腸の外)に漏れてリンパ液が貯まると乳糜(にゅうび)腹水といいます。胸腔内(胸の中で肺の外)に漏れる場合には乳糜胸水となります。

    (2017年9月1日)
リンパ管疾患情報ステーション