概要
リンパ管腫症は、全身の様々な臓器にリンパ管の組織が増殖する非常に稀な病気です。もともとリンパ管は中枢神経系(脳、せき髄)、骨以外の体のあらゆる場所に存在し、体液バランスや重要な栄養を輸送し、免疫を司る重要なパイプです。この病気は異常な構造となったリンパ管が、骨や肺などを中心に様々な組織に浸潤し、ひどい場合は命に関わることもあります。
国内では症例報告はありますが、正確な患者数は把握されておらず、発症要因などに関してもわかっていません。小児、若年者に多く発症します。症状や予後は浸潤臓器により様々ですが、特に縦隔(じゅうかく)、肺に浸潤し、乳び胸(にゅうびきょう)による呼吸困難や窒息を起こします。また骨に浸潤し、疼痛や骨折も起こします。治療は食事療法、外科療法や内科療法(インターフェロンなど)を行いますが、胸部に発症した場合は治療が困難なことがあります。
(2013年3月15日)
現時点では、国内での症例数の詳細は不明です。小児、若年者に多く、ほとんどが20歳までに発症すると言われています。
(2013年3月15日)リンパ管系の異常発生による稀な新生物であると考えられていますが、原因はまったく明らかになっていません。似ているリンパ管系疾患(リンパ脈管筋腫症など)もありますが、原因や病態は異なります。
進行性に骨融解するゴーハム病という病気があり、リンパ管腫症と同じように乳び胸を合併することがあります。これらの病気は全く別の病気ではなく、類似した病気と考えられますが、根本的な原因は不明であり、さらに研究が必要です。
症例の75%が多臓器に浸潤を認めます。症状は腫瘍の浸潤部位によります。主な症状としては、胸水、乳び胸による息切れ、咳、喘鳴、呼吸苦です。また骨病変は図に示すように、全身の骨に発生し、疼痛や病的骨折、脊椎神経の障害などを起こします。
(2013年3月15日)前述の通り、胸水、乳び胸、腹水、骨折、皮膚病変、熱、内出血、気道閉塞、呼吸障害、局所の感染症、リンパ浮腫などがあります。
(2013年3月15日)骨や肺の症状などが出現し、病院に受診します。非常に稀な病気で、症状は人によって違うため、最初から病状や検査結果だけでこの病気であるとすぐに診断がつくことは難しいです。そのため、病状が進行しないと見つからないケースも多いです。
最も多い浸潤臓器は骨と肺です。そのため、原因不明の溶解性骨病変と乳び胸がある症例は本疾患を疑う必要があります。骨病変は全身のどの骨でも起こると言われ、X線では溶解性骨病変、病的骨折などの所見があります。他の疾患と鑑別するためにMRI検査が有用です。肺病変は高分解能CTスキャンが有用で、縦隔、肺門軟部組織のびまん性の液貯留や小葉間中隔肥厚、すりガラス陰影、胸水などが検出されます。最終的には、骨病変などの病理組織から増殖したリンパ管を同定することによって確定診断が可能です。また縦隔、肺、肝臓や脾臓など様々な臓器に浸潤することがあるため、疑われた場合は全身検索が必要です。
残念ながら、標準的治療はありません。骨の局所病変に対しては、外科的切除や放射線治療、硬化療法が選択となります。乳び胸に対して胸腔穿刺、胸膜癒着術、胸管結紮術、胸腔腹腔シャント、放射線治療などを行いますが、治癒困難なことが多いです。また、乳び胸を減らすため、高カロリー輸液、中鎖トリグリセリドなどの栄養療法も行います。薬物療法としては、化学療法(抗がん剤)、インターフェロンα2b療法などを使用しますが、治療効果は限られています。海外ではステロイド、サリドマイド、ラパマイシン、プロプラノロールなど様々な薬が試みられていますが、明らかに効果が示された薬剤はありません。また副作用などの十分な検討はなされていない薬剤もあります。
(2013年3月15日)