リンパ管腫患者の全国実態調査のための予備調査
研究班の発足した平成21年度に行われた「全国実態調査のための予備調査」の結果の一部を掲示します。
予備調査では、全国の14の小児外科施設を過去20年間に受診したリンパ管腫患者を対象とし、診療録(カルテ)から疫学的情報、病態、診断、治療、QOL、等につき詳細な調査しました。
その中で、各症例毎に初診時の重症度、最終受診時の難治性について各施設の担当入力者に診断する項目を設けました。
これが入力者がカルテ情報から、初診時に重症というべきか、最終的に難治性といえるか、を判断した調査表です。 もともと診断基準がないため、この回答は基本的には入力医の主観的な判断になります。
総勢で620例が登録されました。その中の10%が初診時に重症と診断されました。 ところが最終受診時で難治性と診断されたものは23%に及びました。中等症の約半数と軽症の一部も難治性と判断されました。 この結果は、一般的に約8割の患者さんにおいては満足いく治療結果が得られることと一致しています。
初診時の重症度に応じた治療経過です。治療が終了となった時点で一段階下がり、また最終受診地点を○で示しています。要するに各曲線は未治癒の患者さんの割合を示しています。
各点はおのおのの症例の最終受診時を示し、消失もしくは著明な改善にて治療終了となっていない症例の率を示します。
軽症と判断された症例も約25%、中等症の約半数は10年かかって治療終了になっています。
重症と診断された患者さんにおいては、治療が初期に奏功した症例を除いて十分治療効果が得られず、また改善していなくても受診回数は減っており、あらたな治療は受けなくなっていることを示していると思われます。
難治性と非難治性を分けて治療経過をたどってみました。 非難治性は3年以内に半数以上が改善を認めています。 一方難治性では20年近く経っても約8割が治療効果が現れずに過ごしていることが分かりました。 このように難治性リンパ管腫では非常に病悩期間が長くなっている実態が示されました。